辞書を引いて英訳した単語が、海外では異なって解釈されていることがよくあります。当シリーズでは英語、日本語両方を熟知し、多数の英語書籍を出版しているデイビッド・セインさんが言葉の意味や用法、また文化背景について解説します。
第7回は「不徳のいたすところ(謝罪の表現)」です。 |
上辺の表現に惑わされず、大事なことをしっかり伝える!
不祥事が明るみに出たり、何か過ちを犯して謝罪する際、よく当事者が口にする言葉です。「自分に十分な徳が備わっていなかったため、人に迷惑をかけてしまった」と自分に非があることを認めた上で、あとにお詫びの言葉を続けます。先ごろの選挙でもよく耳にしましたよね? It is my unworthiness that has brought things to this.という、もっともらしい英訳が紹介されている場合もありますが、実際にネイティブがこの表現を使っているのは聞いたことがありません。和英辞書などでは、put the blame on me(自分のせいにする)やfeeling morally responsible(道義的に責任を感じる)など、さまざまな「自分を責める言葉」を紹介していますが、このような表現で注意したいのは「何が一番大事か」です。本来「不徳のいたすところ」が言わんとしているのは、自分が悪いという「謝罪の気持ち」ですから、まずはそれがしっかり相手に伝わるよう訳すことが重要です。
「不徳のいたすところ」はあくまで謝罪文の「枕」に過ぎませんから、あとには I’m very sorry for causing this.(このようなことをしてしまい本当に申し訳ありません)やThis is all my mistake. I’m really sorry.(これはすべて私の過失です。本当にすみません)、 I need to take responsibility for this. I’m really sorry. (このことに対して責任を取る必要があります。本当に申し訳ありません)などのお詫びの言葉をきちんと続けましょう。
よくある謝罪文を英語にしよう!
① 私個人の問題で世間の誤解を招いたことは、公人として不徳のいたすところです。
② このような状況に至ったのは、まず企業の最高責任者である私の不徳の致すところであり、多くの方々にご迷惑をおかけしたことを、心よりお詫び致します。
いずれも実際に使われたフレーズですが、私なら次のように訳します。
① As a public official, I must apologize for letting personal issues result in this public misunderstanding.
② I recognize that this situation was brought about by my personal poor moral judgement as the chief executive of this corporation, and I would like to sincerely apologize for the distress felt by so many people.
いつかこのフレーズが役に立つ日が来ては困るのですが、覚えておいて損はないでしょう。
謝罪表現は幅広くマスター
同じ謝罪の繰り返しでは、相手に誠意が伝わりません。次のような「真剣に謝るための定番表現」を覚えておくと便利です(→が、より丁寧な謝罪になります)。
I’m sorry for…
→ I am truly sorry for …
I apologize for …
→ I must apologize for…
→ I do apologize for …
→ I really must apologize for …
→ Please accept my apologies for …
I hope you’ll forgive me for …
→I know you can never forgive me, but I’m truly sorry.
I owe you an apology for …
→I hope you an apology from the bottom of my heart for…
I shouldn’t have …
→It was irresponsible for me to…
上辺ばかりの借りてきたような言葉より、たとえ定番でも心のこもった表現を使うようにしましょう。