「神回・神ってる・神がかっている」は英語で何という?– 英訳が難しいビジネス英語表現

デイビッドセインさん 辞書を引いて英訳した単語が、海外では異なって解釈されていることがよくあります。当シリーズでは英語、日本語両方を熟知し、多数の英語書籍を出版しているデイビッド・セインさんが言葉の意味や用法、また文化背景について解説します。

第17回は「神回・神ってる・神がかっている」の英語表現を解説します。

 今年の夏は猛暑だったこともあり、外出せず自宅でテレビを楽しんでいた人が多かったようです。テレビを見ていて気になったのは、最近やたら「神〜」という表現が気軽に使われていることです。「神回」「神ってる」「神対応」など、「神〜」とするのはブームなのでしょうか?
 実は英語では、神にちなんだ言葉を使うのは憚られるため、似た音の言葉に言い換えることがあります。たとえば驚いた時の表現Oh my God.を、Godという言葉を使わずにOh my gosh.またはOh my goodness.と言う人は、そういう理由からです。
そのため日本人が気軽に「神〜」と言うことに、やや違和感を覚えます。文化的な違いもあるので仕方ないでしょうが、なぜ仏様でないのかは疑問に思うところではあります。
 そこで今回は、私が気になった言葉「神〜」の英訳に挑戦しましょう。

「神回」を英語にすると?

 一番気になったのが、テレビ番組などで特に注目の放送回のことを「神回」と呼ぶことです。正直これは最初、何を意味しているのかさっぱりわかりませんでした。これを英語で表現すると、どうなでしょう? 

the best episode (of the series)
an incredible/amazing/fantastic episode

 「神のような」を意味する言葉として、godlikeがありますが、ここでgodlikeを使っても「何がgodlikeなのか」はわかりません。
 では「今日の最終回は神回だから絶対に見ないと」を英語にするとどうなるでしょう? 私なら次のように訳します。

The final episode is going to be amazing, so I have to watch it.

amazingで神回の凄さが表現できるはずです。

「神ってる」「神がかっている」を英語にすると?

 この夏の話題の一つに、世界的なサッカー選手がJリーグやってきたことがあります。中でもバルセロナに所属し、スペイン代表でもあったアンドレイ・イニエスタ(Andrés Iniesta)選手の妙技は「神がかっている」とまで評されます。
 ネット用語では、この「神がかっている」を「神ってる」と表現しているようです(これも最初はまったく何のことかわからず、布教活動でもしているのかと思いました)。
「神ってる(神がかっている)」を英語にするなら、これまた「ものすごい」などの褒め言葉となるawesomeamazing, incredible, wonderful, beyond description(言葉では表現できない), perfect, godlike … といった表現がオススメです。

 では、「イニエスタのサッカープレイは神ってる」を訳すとどうなるでしょう?

Iniesta’s play is godlike.

 今回、私はあえてgodlikeを使いました。先ほどの神回はテレビの放送回のことですので、godlike(神のような)を使っても意味不明です。でもイニエスタは有名なサッカー選手であり、Iniesta’s playを主語にしてgodlikeを補語にすればそのまま完璧に通じます。
godlikeの代わりに immaculate(欠点のない・一点の曇りもない)やdivine(神聖な・素晴らしく素敵な), like a miracle, unbelievable, supernatural(超自然の・神業の)などと言い換えても通じます。でもgodlikeがこの中で一番シンプルかつ、わかりやすいのでオススメです。
ついでに「イニエスタの神ったプレイに日本中が驚いた」なら、

Everyone in Japan was blown away by Iniesta’s incredible skills.

となります。

 今後は同時期に来日したフェルナンド・トーレス(Fernando José Torres Sanz)の活躍も期待しています。ちなみにトーレスのニックネームは「神の子(これまた神ですね!)」で、母国ではEl Niño(エル・ニーニョ)と呼ばれています。スペインサッカー界の大物2選手が来日し、同時にJリーグでプレイするのは、何かの縁なのでしょうね。

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