辞書を引いて英訳した単語が、海外では異なって解釈されていることがよくあります。当シリーズでは英語、日本語両方を熟知し、多数の英語書籍を出版しているデイビッド・セインさんが言葉の意味や用法、また文化背景について解説します。
第13回は「恐縮ですが」「恐れ入ります」の英語表現を解説します。 |
新年度がスタートしたのにあわせ、前回からビジネスシーンで使う「いかにも日本語らしい表現」を紹介しています。今回は、相手への感謝の気持ちや、申し訳なさを伝える時に用いる言葉「恐縮ですが」「恐れ入ります」を英語にしてみましょう。
「恐縮ですが」「恐れ入ります」を英語にすると?
日本語では「恐縮です」「恐れ入ります」など、この言い回しのみで使うこともあれば、「恐れ入りますが~をお願いします」のように、フレーズの一部として使うこともあります。この言葉自体が具体的な意味をもつのではなく、他者への謙虚さを表すためのレトリックとして使われてる言葉です。
英語でまったくイコールになる言葉はありませんが、似たようなニュアンスの決まり文句はあります。教科書英語では目にしない、まさに「大人の英語」とも言える表現です。ぜひマスターして使いこなしてください。
聞きづらいことを質問する際に使われる表現
I hesitate to ask this, but do you know where my suitcase is?
こんなことをお聞きして心苦しいのですが、私のスーツケースがどこにあるかご存知ですか?
※ I hesitate to ~で「〜するのをためらう・躊躇する」という意味になります。言いにくいことを切り出す時に使われる表現です。
At the risk of sounding rude, are you looking for a job?
失礼を承知でお聞きしますが、お仕事を探されていますか?
※ at the risk of ~で「〜の危険を冒して・覚悟で」という意味になります。勇気を出して、あえて何か質問するような時に使われます。
何かを断る際にお詫びの気持ちを含める表現
It’s nothing personal, but I’m not interested.
個人的にどうというわけではないですが、私は興味がないです。
※ It’s nothing personal. は「好き嫌いの問題ではなく」と、あえて釈明したい時に使われる言い方です。
I’m afraid I won’t be able to attend the seminar.
申し訳ありませんが、セミナーに参加できないそうにありません。
※ 何か断る際は、ストレートに言うのではなく、I’m afraid ~のように何らかの謝罪をつけて伝えるのが一般的です。
This is hard for me to say, but I don’t think I’ll have time.
こんなことは申し上げにくいのですが、時間があるとは思えません。
※ This is hard for me to say~は言いにくいことを告げる時に使われる表現です。
With all due respect, this isn’t what I asked for.
恐れ入りますが、これは私が希望しているものとは違います。
※ With all due respect, 相手の発言に対する反論としてよく使われる決まり文句です。
「一歩上をいく会話」が印象を変える
英語表現はストレートだとよく言われますが、実はそれも内容によりけりです。
ビジネスシーンのように相手との「言葉のキャッチボール」が必要な場合、自分の発言が相手にどう聞こえるかまで考えて口にするべきです。
よく「英語は中学英語で十分」などと耳にしますが(私もそんなことを書いている本がありますね?!)、商談のように「一歩上をいく会話」では、ちょっとした言い回しが印象を左右します。
ぜひこのような「言葉を尽くす表現」も覚えておいていただきたいものです。