アメリカの母の日と日本の母の日のはじまり

  世界中で、母の日をお祝いする国は40か国以上存在しますが、日付は国によって異なります。最も多いのは3月または5月で、どこの地域でもだいたい同じように、街では「母の日セール」がはじまり、家族がお祝いをします。
 世界の母の日の起源については諸説ありますが、今回はアメリカと日本の母の日に焦点を当ててみたいと思います。どちらも困難な時期を経て現在の形に至っています。

アメリカの母の日のはじまり

 まずは、アメリカの母の日のはじまりを見てみましょう。アメリカの母の日は、長い期間を経て制定されました。

 1850年後半に、平和活動家(peace activist)のアン・リーブス・ジャービス(Anne Reeves Jarvis)がアメリカの南北戦争(the American Civil War)で負傷した南北両方の兵士と、その公衆衛生面サポートのための「母の日ワーク・クラブ」(Mother’s Day Work Clubs)を立ち上げます。戦争が終わると、アンは他の活動家と共にかつての敵同士を結びつける平和活動を行うようになります。

 その後1870年に、詩人であり作家であるウォード・ハウ(Ward Howe)が国際問題の平和的解決を促進するために、あらゆる人種の母親たちが団結することを願う「母の日宣言」(Mother’s Day Proclamation)を発行すると共に、初めて「母の日」の宣言を行いました。

 1905年にアン・リーブス・ジャービスが亡くなると、母の意思を継ぐ娘のアンナ・ジャービス(Anne Jarvis)が「母の日」を正式なアメリカの祝日とするためのキャンペーンを開始します。母アンの死後3年後、1908年にウェスト・ヴァージニアのアンドリュースメソジスト監督教会(Andrew Methodist Church in Graffton)にて、「母の日」としてはじめての公式の儀式として母親たちをたたえる記念式を催しました。その時、母のアンが好きだったたくさんの白いカーネーションを送ったのです。

制定までの道のり

 しかしながら、1908年、アメリカ合衆国議会は「母の日」を正式な祝日とする提案を却下します。「それなら義理の母の日も制定しなければならない」というジョークが出ていたほどです。

 それでもアンナは努力を続け、その甲斐あって1911年までにすべてのアメリカの州が母の日を祝日とすることを決定しました。そして1914年、当時の大統領ウッドロウ・ウイルソン(Woodrow Wilson)が5月の第2日曜日を「母の日」として国の祝日とするという声明にサインするに至りました。

母の日の商用化とアンナの戦い

 母の日が正式に祝日となった後、1920年頃,ホールマーク社(Hallmark Cards Inc.)、またその他の企業が 「母の日のカード」を販売しはじめます。アンナは「母の日」は儲けのためのものではなく、手書きのメッセージを贈り心を伝えるものであるべきだと主張します。そして、母の日ボイコットを先導し、そして企業に対して「訴訟を起こす」と警告したりするようになります。

 それからのアンナの行動は、「母の日」をつぶすかのごとく激しくなっていきます。1925年までには、母の日に母親にカーネーションを贈る習慣ができていましたが、アメリカ兵士の母の会(the American War Mothers)が資金集めのためにカーネーションを販売していることに腹を立て集会に押しかけ、逮捕されてしまったという話もあります。

 アンナの行動は常軌を逸しているようにも見えますが、母親が大好きだったカーネーションに思い入れが強く、商用利用する人たちを許せなかったのかもしれませんね。カーネーションを贈る習慣は現在アメリカで続いています。赤いカーネーションは母親、白いカーネーションは亡くなった母親を象徴しています。

日本の母の日のはじまり

  次に日本の母の日のはじまりを見てみましょう。日本では、1931年に大日本連合婦人会(the Imperial Women’s Union)の結成を機に当時の香淳皇后の誕生日である3月6日を「母の日」としました。

  第二次世界大戦中、日本では西洋の習慣を祝うことが禁じられたため、「母の日」は突然中断されます。戦争が終わり、「母の日」がまたはじまりますが、戦後はアメリカと同じ5月の第2日曜日を「母の日」とするようになります。
日本でも「母の日」に母親にカーネーションを贈るのが一般的ですね。

  以上、アメリカと日本の「母の日」について見てきました。アメリカの「母の日」の話は文献により内容が若干異なることもあります。興味のある方は、”Anne Reeves Jarvis、Anne Jarvis” といったキーワードで検索してみてください。更に深い話、驚くような話をたくさん見つけられると思います。

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