当シリーズでは、世界の国名の英語表記についてご説明します。第1回は、英語便メンバーよりよくあるご質問をもとに、冠詞のつく国、つかない国について解説します。
国の名前には、Japan(日本)、Canada(カナダ)のように、冠詞のつかない国名に対し、the USA(アメリカ合衆国)のように冠詞のつく国名があります。基本的には、州や島のような複数の地域が集まりグループ/集合体を成す国の名前には冠詞theがつき、それ以外にはつかないということになります。ただし、例外もあります。以下に冠詞の基本的ルールを参考にして、公式な名称を使うときは独自に調査するようにしてください。
国名の正式名称と通称
国名表記には、正式名称と通称があります。例えばフィリピン共和国の正式名称は、the Republic of the Philippinesですが、「フィリピン」という通称では、the Philippines、またはPhilippinesとも記載されます。どう使い分けるかについては文章の用途によります。例えば、ビジネスの公式文章では、正式名称を使うべきですし、カジュアル文章であっても、センテンス内では、I went to the Philippines. のように冠詞をきちんと記載すべきです。一方、国名一覧などでは、冠詞がない方がアルファベット順で探しやすいなどということがあると思います。
インターネットでは、正式名称、通称が混在しています。このため正しい表記を検索で見つけようとすると、余計混乱してしまうことがあります。正式名称を検索したいときは、検索キーワードに”official name”というキーワードを追加することで正式名称が見つけやすくなると思います。
では、以下theをつける基本ルールについて見ていきましょう。
Theをつけるルール1 – 州や地域が連結した国
例えば、アメリカの英語表記にはAmericaというものもありますが、「アメリカ合衆国」という集合体を表す表記にはthe United States of Americaと冠詞がつきます。このように、United「連合した」、States「(複数の)州」といった表記を含む、州や地域が連結して国を成すという意味のグループ表記には、定冠詞theが使われます。
[その他のグループ表記の国名例]
the UK / the United Kingdom イギリス
the UAE / the United Arab Emirates アラブ首長国連邦
アメリカ合衆国の表記は他にもThe USA / the US / the United Statesなどがありますが、省略形においても同様にtheをつけます。
アメリカ、イギリスの表記については以下の記事も参考にしてください。
USA or US? – アメリカの名詞・形容詞用法 |
Theをつけるルール2 – Republic (共和国)
国名に、Republic「共和国」を含む国名には、定冠詞theを使います。
「共和国」を表す最も一般的な形は以下のようなRepublic of nameの形になります。
the Republic of Indonesia インドネシア共和国
the Republic of Ireland アイルランド共和国
また、以下のようにRepublicが後尾に置かれる表記もあります。
the Central African Republic 中央アフリカ共和国
the Czech Republic チェコ共和国
Theをつけるルール3 – 島の集合体
フィリピン、モルジブのように、島が集合して1つの国を成している国の名前には集合体を示すtheをつけます。ただし、例外もありますので、正式名称は都度確認してください。
the Philippines フィリピン
the Maldives モルディブ
[注意点] 上記のthe Philippines(フィリピン)、the Maldives(モルディブ)の正式名称は、それぞれThe Republic of the Philippines、The Republic of Maldivesとなります。正式名称においては、Maldivesの前にはtheがつきません。このように、名称は各国毎に定めているところから、一般ルールに当てはまらないケースも見られます。大変紛らわしいのですが、正式名称については、公式文章などで調査するようにしてください。 |
以上、国の冠詞のあるなしについて簡単に解説しました。次回は、ライティングにおいて国の名前を表記するときの単数、複数扱いについて解説させていただきます。