ChatGPTのような生成AIの出現により、ライティングの形が大きく変わろうとしています。今後、英文ライティングやライティング学習はどう変わっていくのか? 教育者も学習者もAIの活用法をそれぞれに模索中です。当記事では2025年1月に研究社より出版の英語便の本「AIを賢く使う英文ライティング:プロンプトとポストエディットの極意」の執筆作業を通じて英語便のネイティブ講師や編集スタッフが実感したこと、また英語教育者や利用者からの意見をまとめ、ライティングや学習におけるAI利用の利点と問題点を簡単にまとめました。
(利点)生成AIでライティング時間を大幅短縮
生成AIは、一瞬で文章を作成できるため、一からライティングを行うよりも圧倒的に時間を節約できます。ただし、生成した文章をそのまま使うのではなく、必ず見直しと修正(ポストエディット)の時間をとることが必要です。AIには得意・不得意な分野があり、例えば、ビジネスの定型文や資格試験のエッセイ生成では修正の必要がないこともありますが、友人へのメッセージや固有情報を多く含む広告文などは、通常時間を取り意味の違いや不適切表現を訂正する作業が必要になります。それでも、一から文章を作るよりもAIを活用することで、ライティングの時間を大幅に削減できるといえます。
(利点)AIを活用して英語学習の幅を広げる
生成AIは、文章の生成やチェックだけでなく、さまざまな英語学習に応用できます。例えば、1つの日本語から複数の異なる英訳を生成することで表現のバリエーションを学んだり、AIを使ってパラフレーズやディベートの例文を出力することも可能です。また、資格試験の模範解答をAIで生成し自分の解答と比較したり、弱点を分析してもらうことも可能です。 翻訳を学習されている方は、同義語のニュアンスの違いをAIに尋ねることで翻訳精度を挙げることもできるでしょう。このように、学習の幅を広げるという点では無限の可能性があるといえます。
「AIを賢く使う英文ライティング」でも述べられているように、AIには得意・不得意があり、時には誤った解答を出すこともあります。しかし、教師や先輩も完璧ではないことを考えれば、AIは家庭教師のような存在にもなり得るし、職場で頼れる先輩のような役割を果たすこともできるでしょう。 |
(問題点)AI任せで失うもの : ライティングにおける思考プロセスの重要性
ライティングでは、最終的な文章の完成度だけでなく、その過程も同じくらい重要です。英語のライティングに限らず、「書くこと」はあらゆる学習において強力なツールとなります。しかし、AIにライティングを任せてしまうと、文章を作るための材料と向き合う機会が失われてしまいます。例えば、教師が生徒にニュース記事を読ませ、その内容について200語で意見を書く課題を出したとします。生徒はすぐに文章を書き始めるのではなく、記事を要約したり、関連する資料を読んだりしながら自分の考えを整理し、それを自分の言葉で表現します。この過程を通じて、新しい概念を理解し、自分の考えを深めながら言葉を形成していきます。AIで文章生成を行うことでこの大切なプロセスが失われてしまいます。思考プロセスを構築するためのライティング学習は必要であり、教育者はAIの活用方法について熟慮が必要です。
(問題点)AI任せの落とし穴:自分の言葉が育たない?
AIに文章作成を任せることで、便利さの一方で自分の表現力が衰える懸念があります。言葉は使うほど磨かれるもの。AIが代筆することで、自分の考えを整理し、適切な言葉を選ぶ機会が減少します。結果、AIの生成した定型句や一般表現を多く使うようになり、自分の言葉としての語彙力や表現力が失われていく可能性もあります。AIを活用しつつも、自らの言葉で思考を深める習慣を持つことが大切です。