本日の記事は、添削のご質問でよくあるBest と The bestの違いについての解説です。
冠詞をつける、つけないの判断は、学習者にとって難しいことの1つですが、この記事を通じて定冠詞theの持つパワーにより、冠詞のあるなしで文の意味やニュアンスが変わるということをぜひ抑えていただきたいと思います。単語bestは、副詞、形容詞、また名詞としても使われますが、当記事では文法解説ではなく、意味合い・ニュアンスに重点を置いて説明しています。
定冠詞の持つニュアンス
はじめに、定冠詞 the のあるなしでニュアンスがどう変わるのか確認します。以下の2つのセンテンスを見てください。
例1
(A) What movie do you like best?
(B) What movie do you like the best?
(A)(B)どちらも文法的に正しく、「どの映画が一番好き?」という意味になりますが、定冠詞のない(A)は単純に「どの映画が一番いいと思う?」というニュアンスであるのに対し、定冠詞theのある(B)は「今まで見てきた映画の中でどれが1番好き?」というニュアンスになります。
The bestと定冠詞をつけると、「あるグループの中で一番・最高」というニュアンスになります。ライティングで迷ったときは、「自分がイメージしているグループの中で最高、または今まで見てきた中・体験した中で最高」という意味合いを出したいときはthe best、単純に「~が良い・最高」というときは冠詞なしのbestを使うという判断ができると思います。 |
別の例を見てみましょう。
例2
(A) I like ice-cream best.
(B) I like ice-cream the best.
冠詞のない(A)は「アイスクリームは最高・大好き」という意味合い、定冠詞のある(B)の方は、「すべての食べ物の中(またはすべてのお菓子の中)でアイスクリームが一番好き。」という意味合いになります。
次は質問に対する回答の例です。
例3
(質問) What kind of pens do you use to draw?
(A) Expensive ones are best.
(B) Expensive ones are the best.
冠詞なしの(A)は、「絵を描くときは値段が高いペンが適している」という意味合いであるのに対し、冠詞ありの(B)は、絵を描くときは(あらゆる種類のペンの中で)高いペンがベストである」という意味合いになります。
アドバイスでは冠詞のないbestを使う
上記でご説明したように、冠詞ありのthe bestをつかうと、「今までの中で最高」という意味合いになるため、アドバイスにおいてthe bestを使うと押しつけがましい強い言い方に聞こえてしまいます。「~すべきだ、~が一番良い」といったアドバイス文においては、以下のように冠詞なしのbestが使われます。
It’s best to get to the bank early, before it gets busy.
混雑する前に早めに銀行へ行くのが一番だ。
Do you think that’s best?
それが一番いい方法だと思う?
以上、bestとthe bestの意味合いの違いを説明しました。冒頭で述べたようにbestは副詞、形容詞、また名詞としても幅広く使われ、場面や文脈により、冠詞のインパクトで意味が大きく変わることもあります。スタイルの良い英文を身に着けるためには、冠詞をルールとして暗記するのではなく、意味合いを理解して自分で使い分けていくことが非常に重要です。ぜひ、いろいろな場面で考えながら使ってみてください。