「異次元の強さ」「キレキレの」は英語で何という? – 英訳が難しいビジネス英語表現

デイビッドセインさん 辞書を引いて英訳した単語が、海外では異なって解釈されていることがよくあります。当シリーズでは英語、日本語両方を熟知し、多数の英語書籍を出版しているデイビッド・セインさんが言葉の意味や用法、また文化背景について解説します。

第11回はオリンピックやスポーツ報道で登場するワードから「異次元の強さ」「キレキレの」の英語表現を解説します。

 オリンピックの興奮冷めやらぬ内に、メディアを賑わした言葉の英訳に挑戦しましょう!

「異次元の強さ」を英語にすると?

 外国人からすると、日本で一番熱かったのはフィギュア・スケートの羽生結弦さんに関する報道だったように思います。そんな彼を形容する言葉に「異次元の」という表現があります。
そもそもalternate dimension(異次元)という言葉は、alternate (other) world(別の世界)とdimension(次元)を組み合わせた造語です。
しかし「異次元の強さ」は「(2次元の平面世界に住む我々一般人とは、違う次元に住むかのように)すごい!」ことを言い、「異次元の」=「桁外れにすごい」という意味になるため直訳では通じません。
では、次のフレーズを英訳するとどうなるでしょうか?

「羽生結弦は異次元の強さを見せた」

 「桁外れにすごい」は英語でもいろいろな言い回しがあるので、ぜひ覚えてください。私なら次のように英訳します。

Yuzuru Hanyu showed that he was in a class of his own.
 *in a class of one’s own=別格である

Yuzuru Hanyu outdid everyone else.
 *outdo everyone else=誰よりも勝る

Yuzuru Hanyu is heads and shoulders above the others.
 *be heads and shoulders above the rest=他の誰より抜きん出て

All the skaters were amazing, but Hanyu was out of this world.
 *out of this world=この世のものとは思えないくらい素晴らしい

では応用問題に挑戦しましょう。次の文の英訳はどうなりますか?

「ロシアの二人のフィギュアスケーターは、異次元の金メダル争いをした」

The two Russian figure skaters fought for the gold medal on a plane above the rest.
 *on a plane above the rest=他を上回る次元で

The two Russians vying for the gold pushed each other to a completely different level of performance.
 *vying=vieのing形で、vie for=…を得ようと張り合う

「キレキレの演技」を英語にすると?

 オリンピックついでに、スポーツでよく使う言葉を英語にしてみましょう。スポーツなどで身体がものよく動いている状態、また頭の回転が早い人などに対し「キレキレの」という表現を使います。

「彼女はキレキレのダンスで観客を魅了した」

Her exquisite performance enchanted the spectators.
 *an exquisite performance=素晴らしい演技

The crowd was amazed by her beautiful performance.

他にa perfect performancea first-class performancea top-notch performance…などがほめ言葉として使えます。

Her top-notch performance appealed to the spectators.

とappeal([人を]ひきつける)を使って表現することもできますが、実は英語のappeal は「感動する魅力」ではなく「気に入る」ぐらいのlikeに近い意味です。そのためこのフレーズは「彼女の最高の演技が観客に受けた」というニュアンスになります。
では最後にもう1つ、頭の回転が早い方の「キレキレ」を訳してみましょう。

「彼はキレキレのツッコミを見せた」

He was really good at playing the straight guy.

 日本語では「ボケ」と「ツッコミ」がセットで使われますが、このニュアンスを英語にするのは非常に難しいです。「ボケ」を簡単にfunny guyと表現するならば、「ツッコミ」は「ストレートにガンガンものを言う人」と考え、straight guyと言い表すのが適当でしょう。
ついでに「彼のコンビでのツッコミ芸がすごく好きだ」なら、I really like the way he plays the straight man in their duo.となります。お後がよろしいようで。

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